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Channel: MOTO GUZZI な おじさんの趣味とこだわりについて
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戦死・・・・夏の終わり

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小学生の1年のころ、ワシは遊び仲間から蝉採り名人と呼ばれていた。
 
店で売っている白いメッシュの捕虫網ではなく、その白い網を取り払い、
 
代わりに手ぬぐい2枚を縫い合わせた、深さが手ぬぐいの長さが有ろうかという
婆ちゃん特製の蝉取り専用の虫取り網(既に網ではない)だ!
 
そして、高所用継ぎ足し竿として、要らなくなった物干し竿を
肩に担ぎ、ランニングに半ズボンに下駄で盛岡中の蝉を採る勢いで
走り回ったもんだった。
 
その手ぬぐい製の蝉取り網のスタイルは昭和30年代の盛岡の少年のスタンダードだった気がする。多分戦前から引き継がれて来た伝統だったのかもしれない。
 
少年たちのそれは、その時家庭にあった手ぬぐいの柄がそのまま反映される
ので、クソガキだったワシらにはどうでもいいことだったが、大人から見れば、
それぞれの家庭の事情が読み取れ、とても面白かったに違いない(笑)
 
ワシのそれは父親と母親が勤めていた、製薬会社の薬の商標である「ワカ末」
と印刷されている藍染の玉絞りの手ぬぐい製だった微かな記憶がある。
 
 
他の友達のは覚えていない。
 
 
 
 
 
 
 
そしてそれを巧みに操り、短い盛岡の夏に200匹以上の蝉を採った。
 
無事捕獲し、手首を返し蝉が逃げないようにすると、手ぬぐいだけに姿が見えないが、暴れもがく蝉の羽の動きが手ぬぐいの生地をぶるぶる震わせる。
手元にそれを引き寄せ、確認するまでが何んともワクワクしてたまらないのだ。
 
数匹を連続でそのまま、捕獲する技も、長くて深い手ぬぐい製だから可能だ。
 
虫かごでは追いつかず、採った蝉は大きな鳥籠に入れ、家の中で飼っていた。
婆ちゃんにしてみれば、さぞ煩かっただろう。
 
蝉にしてみても、交尾はするものの、産卵場所の土の地面もなく、災難この上なかっただろう・・・。何んと残酷な少年だったことか・・・。
 
 
イメージ 1
<北関東以北の山間部にしかいない蝦夷蝉>
 
とった蝉は地域柄、北東北には関東や南日本のように、昆虫図鑑に載っているようないろんな種はおらず、殆どがアブラゼミと蝦夷蝉だった。
 
 
 
ところが翌年埼玉に引っ越してきて、事情が変わった。
7月の初めには、春蝉やニイニイ蝉が鳴きはじめやがて葉脈が綺麗なミンミン蝉、アブラゼミ、お盆のころにはツクツクボウシ、晩夏になるとヒグラシが鳴いた。
 
 
 
 
 
当然、獲物もそれに準じて捕れ、運が良ければ蝉の王様 クマゼミも採ることができた。 ワシは転校して来て、まさに水を得た魚のように蝉を採った。
まるで天国のような夏だった。
 
 
蝉名人の秘訣はよい耳とそれにリンクした良い目だ!遠くからでもあ、
そこだ~!っと瞬時に位置を捕捉できるセンスと洞察がものをいうのだった。
 
そんな記憶が、最近の怪しい脳みそでもどこかににこびり付いてるのか、いい大人になった今でも、蝉時雨がする公園の中を歩くと、ついつい蝉の鳴き声の方向を目で追って、何処にいるのか確認しようとしてしまう。
 
 
まるで本能のように・・・・。
 
そして捕捉すると、ヨシ!まだまだワシもイケるぜ!・・・と心の中で頷き、その場を立ち去るのである。
 
いい大人が、まるでアホだ・・・・。
 
 
イメージ 2
 そんなワシが通っている仕事場に行く途中に通る大きな公園がある。
 
 
イメージ 4
いくつもの蝉の抜け殻・・・・
 
そこは小学校が併設されているのだが、ワシが思うに都内杉並区でもかなりおびただしい数の蝉の繁殖場所でもある。
 
最近の子供はあまり蝉取りなどには興味がないのか、夏の時期に虫取り網を持った少年たちを見たことがない。
 
 
イメージ 3
<まだ孵化したばかりのみんみん蝉>朝8:20
 
そのせいかこの公園の蝉たちは、呑気なもので、平気で手が届く高さにたかって、そこらじゅうで賑やかに盛大に鳴くのである。
 
 
 
 
種類も豊富だ。 誰も見てなければ、会社の行き帰りや昼飯の時など
童心に帰って素手で取りたい衝動を抑えている自分が居たりする。
 
 
 
 イメージ 5
何年も地中で暮らし、やっと地面から這い出して、ただひたすらに伴侶を
求め雄は鳴き、やがて交尾を終え、一週間ほどで果てる命・・・
 
残された雌も産卵を終えると、つかの間の命を終える。
 
 
お盆が過ぎ、最近は毎日通う職場までの公園の歩道には、
何時か観た記録映画の戦死した兵士の如く おびただしい量の遺骸が転がっている。
 
せめて前のめりにうつ伏せの状態で果てて欲しいのだが、不器用な6本の足が絡まり、力尽き、地面に落ちた際、それが支点になり、ころりと反転してしまい、悲しいかなすべて仰向けになってしまうのだ。
 
すれ違うOLのヒールは それを器用に避けて駅へ急ぐ・・・
なんと哀れで無惨な光景だろう・・・・。
 
ちゃんと交尾を終え、命の連鎖を繋ぎ、短い命を真っ当した姿であることを願わすにはいられない。
 
 
 
そうか・・・・せめて艶やかな牡丹や夏椿が如く、咲き乱れての末、
 
ぼたり と落ちた姿と思ってやれば良いのか・・・・・。
 
 
 
 なんてな・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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