1980年ころから、木枯らしが吹き始めるとこの通称マウンテンパーカをずっと着てきた。
アイビーだ トラッドだ ヘビーデューティーだ コンチだ サーファーだ
ニュートラだ・・・とトレンドに翻弄された10代後半~20代の前半のころ、
乗鞍スキー場の定宿にしていペンションに年越しで必ず一緒になる松本のお医者さんがいた。年のころ40代半ばの落ち着いた紳士だった。
彼は冬山以外はやるらしいが、冬はスキーもせず朝からただ酒を適度に飲み、たまに宿のスタンドピアノを弾き、薪ストーブの脇でつかの間の休暇を山で過ごすのが毎年の年越しのスタイルだった。
ミーハーの極みのような我々に比べ、圧倒的に大人で落ち着いた感じがするのは、その人柄から伝わって来るものだけじゃなく、別に垢抜けているわけでもないが、どこか知的なそのアウトドアっぽい出で立ちから来るものなのか・・・?と
有る種の憧れと共にそのドクターのライフスタイルにインスパイアーされたものだ。
そう思ってからは、自分のワードローブに少しずつアウトドアウェアを加え、カヌーやアウトドア遊び、キャンプと今に至る訳だが、最初に手に入れたのが、この60/40パーカと渋谷公園通りのバックドロップで買ったDannerだった。
おそらくプレッピースタイルがメンクラなどで特集された記事に、当時出始めのツープリーツのチノパンやアウトドアシューズと並んで彼等のマストアイテムとして紙面に紹介されていたからなのだろう。
こんなエピソードがある。
当時付き合っていた女性の勤め先の総合商社のある部署(大倉スポーツ)がSIERRA DESIGNSの輸入総代理店だったのだが、このパーカのパッキンを積んだ船便が事故で浸水してしまい結構な量の60/40パーカが海水に濡れてB品になってしまい、関係者内で処分することになり、当時の定価¥19900がクリーニング済で1枚半額の¥9,000、裏がタータンチェックの紡毛裏地付の防寒性が高い上位モデル\24900がやはり半額の12900で譲ってもらえるという情報が彼女から入ったのだ。
当時トラッド系アパレル企業の新入社員だったワシは、社内の先輩たちににその業界情報を流し、まとめて10着程度彼女に買ってもらったことがあった。
それが冒頭の画像の60/40パーカだ。
80年から10年以上は着ていたが、その後はキャンプ専用になり、挙句は車のトランクの中の非常用ユーティリティ上着に成り下がったままになっていた。
それからしばらくして、21世紀に入り、たまたま実家の近所のダイクマで金融流れの
新品のグリーンの60/40パーカが¥9,900でわずか数枚ラックで売られているを見つけすかさず買ったものをつい最近まで着ていた。
これを読んでいる方はご存じだろうが、このSIERRA DESIGNS 60/40 PARKA
の60/40の由来は、表地(実は総裏の袖裏と胴裏の下部分以外は表地と同じ色違いの生地使い)混率が60%が綿で40%がナイロンという特殊な組成の生地を使っていることにある。(通常は混紡のコットン/ポリエステル)
そこまではお洒落さんなら誰でも知っているが、この生地が特殊なのは、混紡ではなく交織なのが特徴。
つまり、緯(ヨコ)糸に高い強度のコットン糸を使い、経糸に高強度ナイロンを使って織った生地で、ファブリックが雨に濡れると水分を含んだ緯糸の綿糸が膨張し、目が締まって表面に出ているナイロン糸が緻密になり、防水効果が生まれる・・といった機能があるのです。
いわゆるベルスタッフやバブアーでお馴染みのオイルドコットンよりやや近代的なローテク・ファンクション・ファブリックの代表的素材。
そして、なぜナイロンなのか・・? 普通はポリエステルなのに・・・?
誰もが思う疑問。
それはやはりナイロンの持つ強度を優先させたかったから・・・ということだろう。
しかし、ナイロンは耐光堅牢度が脆弱で、UVに弱く、すぐ退色(色褪せ)してしまう弱点があるのだ。
2着目に買ったワシのダークグリーンの60/40パーカも買ってから既に15年着て来たが、濃色ということも有り、肩から上袖にかけて、紫外線による退色が目立つようになり、いささか気が引けるので・・・・、
年末に最後のポチで、同じグリーンの60/40パーカを¥8,800で落札したものが大晦日に届いた。使用感が少なく程度もいいし、退色も殆どない良品だった。ラッキー!
早速今まで着ていたものと比較検証してみることに・・・
実際見るとここまでひどくはないが、ナイロン糸部分の色が紫外線退色し、ジーンズ同様、綿糸部分は洗濯で脱色された白けた色になっているのが一目瞭然である。
今まで着てた物 最近した入手したもの 大昔の初期物
ちなみにそれぞれの裏側の織ネームを見てみると・・・
80年代初期のMサイズ。60/40PARKAの織ネームだけで品質ラベルは既に印字が消えている。35年も経ってれば当たり前だわな・・・
実は米アウトドアメーカーのアメリカン・レクリエーション・プロダクツ・インターナショナル・インク(ARP)日本法人の品質ネームが付いている。
これ大倉スポーツが輸入していた時代以後の物になる訳ね・・・
・・・・・ということは、
ふ~~~~ん・・・なるほどね・・・。
このSIERRA DESIGNSのモダンな織ネームも、初期の80年代ものには
付いていない・・・。
その他、ファスナーとか引手とか、ウエストドローコードとかのディーテールの違いが結構あって、面白いので次回は その2 でその辺りを紹介解説しますね。
あ、そうそう、これマウンテンパーカってよく言うけど、
何処にもそんな名前書いてないので、
マウンテンパーカと言ったら、SIERRAの60/40パーカしか指さないのだ・・と言うのは間違いです。
WOOLRICHのだって、怪しいパチ物だって、この形なら立派なマウンテンパーカ(山で着る上っ張り)です。
でも最初にこの様式のフーテッドパーカのデザインを世に出したのは、
紛れもなく SIERRA DESIGNSなんだろうな・・笑
ちなみネット検索したらこんなのが・・・
サイズ感もかなり最近の流行かなんかしらんがすっかりタウンウェア的なこれじゃ日本人しか着れんだろ?的な小さ目のサイズ設定に成り下がってます。
(着丈が同じサイズで5cmも短い)
上着で3cm短いということは身長差で6cmも低いということ!
セレクトショップで売ってるのなんて、XSとSとMばっかり・・・
値段も5万弱・・・・驚いて物も言えない。
実は着ているうちに必ずハンドウォーマー付の腰ポケットの上端部分からパンクしてほつれてくるし、正直縫製品質が良いとは言えないこのパーカ・・・
価格が高過ぎです。
でも味があるんだよね・・・だからせいぜい19,800が リーズン エイブルな値段だと思うのだが・・