最近嵌っているマーベルコミックスのスピンオフ企画でABC製作の
ドラマ 「エージェント・カーター」に登場する男達のスーツの着こなしが
しっかり時代考証され実に良いのである。
こんな感じの第一次大戦~第二次大戦の混沌としていた世の中がクラシックからモダンに移行する40年代のラペルの幅も広くネクタイ巾も広いゆったりしたメンズスーツの時代だ。サスペンダーがイイよね・・・
それに比べてレディスのスタイルは同じ分量感でもウエストをしっかりマークした女性らしいシルエットのスタイリングで、ジャケットの丈も長めで、どこか80年代後半~90年代のボディコンスタイルのネタのようにも見える。これでスカートの丈が40cmぐらいだったら肩幅も広いしそのままだよね・・爆
2017年レディスはすでに一昨年あたりからこんな流れは来ているようだ。
ま、レディスは良いとして、注目したいのが ネクタイなんだよね。
最近は15年くらい前からクラシコ・イタリアやその源流であるブリティッシュトラッドの影響でやたらとレップ地に小紋柄やレジメンタルストライプばかりが流行っているが、振り返ってみると、バブル期~90年代のトラッドは色気のない正統派トラッドからちょっと遊んで、北部イタリアが産地のジャガード織りの光沢感のある生地にアーティスティックなプリントを施したネクタイをVゾーンの要にしたものだ。
タケオ・キクチや西武流通Gの渋谷のSEED館のメンズMDもその流れだったように思う。
80年代終わりのNYのネクタイメーカーの当時のトレンドは、ポールスミスやジャンフランコ・フェレ もちろん ジョルジュ・アルマーニら メンズデザイナーの影響もあり、レトロでPOPなプリントが多かった。
クラシカルなダークスーツやツイードジャケットに綺麗な配色のプリントタイをして楽しんだものだが・・・・
どうしてもエージェント・カーターに登場する男達の懐かしくもモダンでPOPな柄の短かめに結んだタイに視線が行ってしまうのだ。
そういえば、私の親父・・昭和一桁世代はこんなネクタイしてたよな・・・。
日本では本格的なトラッドなレップタイはいわゆるVANジャケットのIVYブーム以降だったように思う。
それまでは日本のお父さんの洋服ダンスに垂れ下がっていたタイは京都西陣や桐生、横浜、新潟十日町などの産地が作った和洋折衷の妙なネクタイだった。
そこで昨日仕事の合間に昔からネクタイやスカーフを作って頂いているナックプランの中村さんの事務所を訪ね、その頃・・つまり古き時代のアメリカのプリントタイの話をしにお邪魔したのだ。
会うなり中村さんにその話をすると・・
<これ・・すごい資料価値のある書籍なんです!>
ネクタイメーカーの老舗 クリケットから独立して当時の伊勢丹ファッション研究所の所長だった林さんと一緒にシャンタルデュモを立ち上げ、エーボンハスの社長になった箸方さんから受け継いだというESQUIRE(エスクァィアー)のダイジェスト版にその辺のことが載ってるよ・・と丁度40年代のシリーズと一緒に、’30~’50のレトロなネクタイ本を開いて見せてくれた。
これ・・・もし我が国に服飾文化ミュージアムが有れば博物館級の代物・・・
発行年が1940年代とか印刷されていて、当時のアメリカのメンズの服飾トレンド、風俗や文化背景、電化製品など 全てが紹介されている今でも出版されているアメリカを代表する男のバイブル的雑誌である。↓
これ最近のエスクアイヤー・・・
男はこうあるべき・・・こう着こなすべき・・・
こういう物を持ち、こういう車に乗り、こういう生き方をするべき・・みたいな・・
ある種当時のエスタブリッシュメント向けのスタイルBOOKだった。
今でもそんあコンセプトの雑誌あるよね・・
もう死語になった・・ダメオヤジじゃなかった ちょいワルオヤジを提唱してたあの本とか・・爆
考えてみれば・・・
’90代初期のトラッドスタイルはそれ以前のタイトシルエットな時代から大分、ゆったりとしたレトロモダンクラシックに振れていた時代で、それはそれでバブルに浮かれた豊かで良い感じだったと思う。
もう弾けてた時代だが、NEWYORKER 1994年FALL/WINTER カタログから・・
ラペルでかっ! 肩幅も・・笑
今と比べて倍くらいラペルの幅が広くて襟も大きい・・・
西武がラルフローレンを展開し始めた’70代後期、ダブルの紺ブレの襟のデカさやパンツの太さに驚いたもんだが、バブル期から’90年代にかけてのTRAD村のスーツはそれ以上だった。ウエスト79cmでパンツの渡り巾37cm 裾巾24cm カフス巾4.5cm、股上26.5cm なんて言ってたもんね・・
トラッドのパンツがこの寸法・・高校生の時、授業をサボって大井のVANの倉庫のファミリーセールに行って買った当時VANでは一番最先端だったMr.Vanのバギーパンツより裾巾以外は太いし、DOMONやjunの初期のバギートップの寸法より太いかもしれない・・・笑
OXFORD BAGS スタイル・・・
こんなメンズパンツの型紙構成をレディス用に起こした、ハイウエストフロントツープリーツのトラウザータイプでマーベルト仕様のマニッシュパンツをハリウッドウエストパンツとか、カルフォルニアウエストパンツと言って、丁度W浅野の時代とか東京ラブストーリーの頃、女子が皆銀座や青山辺りでマニッシュスーツ着てたっけね・・
当時は婦人服やってて、W浅野と鈴木保奈美をモロにイメージして服作ってたかもしれない・・・。
衣装提供のオファー来たぁ~!とか浮かれてた時代だよね・・
話が横に逸れましたがな・・・
でも今振り返ってみると、エージェント・カーターの中のメンズの着こなし、つまり
’40年代のそれを見ることができ、しみったれた今の時代のネットとエコカーにへばり付いてる色気のない男の時代を抜け出して、希望的観測として・・・
どこかに無駄がある少々問題を抱えた色気のある男の方向に、あの時代のスーツの「ゆとり寸」と共に今後のメンズトレンドになって行って欲しいと願うのである。
完全に個人の趣味でスイマセン。
最近こういったシルクジャガードの繊細な生地のアートプリントのネクタイ無いよね・・と言ったら、最近ネクタイ売れないからプリント版代が元取れなくて作らなくなったのよ・・と業界の事情を教えてくれた。
すると中村さんが サンプル棚から懐かしいサンプルを出してくれた・・
10年位まえに、没になったダイムラークライスラー用にワシがデザインして作ってもらったディーラースタッフ用のネクタイ・・・
個人的には出来もすごく気に入ってたんだけど、配色がBMっぽいと却下されたっけ・・
んじゃベンツのイメージカラーって何よ・・サテンシルバーのイメージしかない。
無彩色は色じゃないし・・
プランニングする時、相当悩んだ記憶がある・・・
言われてみれば確かに・・爆
でもね・・・
当時のCIカラーイメージがこんなんだから この色にしたのにね・・・・
苦い思い出ですよ。笑 これ世界に1本しかないネクタイ・・・
ベンツオーナーの人で どうしても欲しいという人には 交渉します。 笑